logo 役に立つドイツ旅行のポイント チップについて


●今回はチップについて考えてみましょう。チップの習慣は日本にはないので我々日本人にはなじみにくいものです。しかしいくつかのポイントさえ押さえておけばそれほど難しいことはありません。要は普通に期待する以上のサービスを受けて嬉しかったという気持ち、それがチップです。何%でなければならないとか、どんなときに払わなければならないとかいう決まりは本当はありません。まさに「お気持ち」。では、個別に考えてみましょう。あ、そうそう、チップのことはドイツ語ではトリンクゲルト(Trinkgeld)と言います。

●最も普通にチップがやりとりされる局面、それはタクシーでしょうか。タクシーではだいたいメーターの10%程度のチップを払うと言われています。しかし、もちろんこれは目安です。例えば18.70マルクのメーターに対し、きっちり10%上乗せして20.57マルク払う人はいません。20マルクで十分です。逆にメーターが17マルクちょうどの時は、ちょっと多いかなと思いつつもやはり20マルク払っちゃったりします。19マルク取ってくれと言って、1マルクお釣りをもらうのもOKです。15マルクだと、17マルク程度かな。ま、そんな感じです。

●メーターの金額が大きくなると10%相当額も比例して大きくなりますが、あんまり律儀につきあう必要はないと思います。例えば100マルクのメーターに対してはせいぜい5マルク程度も払えば十分です。もっとも、飛行機に遅れそうで無理してとばしてもらった、すっげえ重い荷物をトランクに積んでもらった、途中で気分が悪くなってゲロを吐くためにたびたび止まってもらったなど、悪いね、ありがとね、というときは別です。はずんであげるのはあなたの勝手ですから。尚、シートにゲロを吐いてしまったときには個別に交渉して下さい。

●ドイツではタクシーでボラれることはまずありませんが、空港なんかで近距離を乗ろうとしたときなどには、舌打ちされたりドイツ語で愚痴られたりすることがまったくないとは言えません。不幸にしてそういう不愉快な目に遭ったり、異常に運転が荒いなどのときは、チップを払う必要はまったくありません。いかにもオマエのタクシーは不愉快であったと言わんばかりの態度で端数まできっちりの金額を払ってやりましょう(あるいはきっちり釣りをもらいましょう)。チップはサービスに対する感謝のしるしです。不愉快ならば払う必要などさらさらないのです。

●尚、タクシーの運転手がチップをお釣りから自動的に差し引いてしまうことはありません。黙っていると運転手はしかたなくお釣りを出そうとしますから、チップをやるときには「釣りは2マルクだけでいいよ」「28マルク取っといて」「釣りは要らないよ」などと早めに言ってやりましょう。さもないと、彼らは不得意な計算をやらねばならない羽目になり、せっかくそうやって差し出した釣り銭からチップを返された日には大きな徒労感が彼らを襲うことになります。配慮してあげましょう。

●次はホテルです。一般にホテルでチップのことを考える必要はあまりありません。彼らは宿泊客にサービスをするのが仕事だという高度な専門教育を受けている(はず)からです。でも、例えば疲れ果ててたどり着いたホテルで重い荷物を部屋まで運んでくれた、足にマメができて痛いので相談したらバンドエイドを持ってきてくれた、など、「ありがとう」と思ったときには、1マルクか2マルク、せいぜい奮発しても5マルク程度のチップをあげて下さい。それであなたの感謝の気持ちが伝わります。でも、これはある程度立派なホテルの場合です。家族経営のペンションでオーナーの家族にカネを渡すのはやめましょう。そのときは心から「ダンケ」と言えば十分です。

●それから、日本人がよくやる枕チップですが、僕は日本人以外でこれをやっている人を見たことがありません。端的に言って不必要だと思います。少なくとも、使い残しの少額コインをジャラジャラ枕の下に入れるのは失礼です。慎んで下さい。チップは感謝のしるしです。メイドさんはコンビニの募金箱ではありません。

●あと、レストランやカフェ。こういうところでは結局味やサービスに満足ができたかどうかが基準です。目安は10%だと言いますが、例えば子供が騒いで迷惑をかけたとか、すっごく美味しくて涙が出るくらい感動したとか、ウェイトレスがすっごく美人で胸元が半分以上見えていたとか、そういうときには多めにあげればいいし、クソまずい上にサービスも最低、すっごく待たされた、日本人だと言うだけでひどい席に座らされた、呼んでもウェイターが来なかったなどのときには一切渡す必要はありません。釣り銭をきっちりもらってさっさと帰ってやりましょう。僕は不快感の表明のために1ペニヒとか5ペニヒとか置いて帰ることもあります。ま、これはお勧めはしませんが。

●あと、クレジット・カードで支払いをすると、金額の下にチップを記入する欄があります。が、もしあなたの担当のウェイター(ウェイトレス)が本当に気持ちのよいサービスをしてくれて、是非チップを置いて帰りたいという場合、この欄に記入するよりは現金を置いてあげた方が喜ばれることが多いと言われます。その場合、伝票のチップ欄には斜線を入れ、合計金額の欄には食事の金額をそのまま書いておきましょう。ま、ドイツだとそんなにひどいことはないですが、イタリア辺りだと勝手に高いチップを記入されることもあるらしいですし。

●それから、旅行者にはあまり関係ないですが、美容院では結構みんなチップを払うようです。担当の美容師に5マルク程度を渡すとか。詳しくは未確認です。

●ともかく、チップは結局「気持ち」です。ドイツ人にも訊いてみましたが、ホテルでは一切払わない、荷物は自分で持つ、枕チップなんて聞いたこともない、タクシーは端数の切り上げ、レストランは味とサービス次第だけどせいぜい切りのいい数字に切り上げる程度、ということでした。だいたい、不相応に多額のチップを払うと、大した身分でもないクセにちょっとカネがあると思って鼻にかけてやがると思われるでしょう。チップは成金が払うもの。僕たちは本当にありがたいと思ったときにだけ、端数を切り上げる程度で十分ということでしょう。



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