logo 宇宙の操り人形 他


1992年にちくま文庫から刊行されたもので、長編「宇宙の操り人形」と3編の短編が収録されている。「宇宙の操り人形」が実際には中編ともいうべき分量であることから、いわばおまけ的に短編を抱き合わせたものであるが、いずれも他では訳出されていないものであり貴重である。訳は「宇宙の操り人形」を含めいずれも仁賀克雄。

 

Project;EARTH 地球乗っ取り計画 1953 仁賀克雄・訳

アパートの部屋で一日中「報告書」を作成している老人ビリングス氏。興味を持ったトミーはその部屋に忍びこむ。ビリングスは地球についてのレポートを書き続けている。地球人はビリングスの上司が企てた「プロジェクトB」だと言うのだ。そして、ビリングスはそれに続くプロジェクトCのサンプルを持っている。小さな木箱に入った9人の男女だ。トミーは彼らを奪って逃げ出す。ビリングスの上司とは異星人なのか、神なのか。初期作品らしいファンタジックな味わい。邦題はミスリ−ディングだと思う。
 

A Surface Raid 地底からの侵略 1955 仁賀克雄・訳

核戦争で壊滅した地上の世界。人間は巨大な地下社会を造り上げ、そこに暮らしていた。だが、わずかに地上にとどまった人間もおり、彼らは退化した共同生活を送っている。地下に暮らすハールはある時、労働力として地上人をかり集める企てを耳にし、自ら参加を志願する。ハールは地上で出会った女性の美しさに打たれ、禁を犯してその姿を彼女に見せてしまう。彼女はその姿に驚き、パニックに。退化した地上社会の描写が牧歌的で興味深い。古き良きSFの香りをたたえた小品。余韻をたたえたラストもいい。
 

Strange Eden 奇妙なエデン 1954 仁賀克雄・訳

探査の途中で見つけた無人の惑星。ブレントは宇宙艇から降り立ち、調査を始めた。その星には森が広がり、人間の生存には申し分ない。だが、彼はそこで先住者に行き会った。それは美しい女性だった。彼女は地球の言葉を話し、地球のことはよく知っていると言う。彼女らは不死の種族で遙か昔に地球と接触があったというのだ。ブレントはその魅力に抗えず、彼女を求めてしまう。だが、その結果、彼は巨大な猫に姿を変えられてしまった。作品としては今ひとつはっきりしない後味。奇妙な雰囲気の作品である。
 



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