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阪神タイガースの上場についてはどうも否定的な意見が多いようだがなぜだろう。先日の朝日新聞にも「心の誇りに札束そぐわぬ」と題して上場反対の論陣を張っている先生がおられた。「純粋な気持ちで70年間応援してきた心と文化。そこに札束をからませて土足で踏み込まれたら、反発するのは当然だろう」と主張しておられるが、心情論としてはともかく、企業論としてはあまり説得的な議論とは思えない。この方は大学で日本経済を教えてらっしゃる教授らしいのだが。

僕は上場のどこが悪いのか考えてしまう。日本のプロ野球は企業名をチームに冠した企業プロである。そこには初めからカネがからんでいる。親会社が苦境に陥ればチームは身売りを余儀なくされ、簡単に福岡から所沢へ、あるいは逆に大阪から福岡へ配置転換される。高額の契約金で新人を奪い合い、カネを生まなくなればファンは置き去りにされたまま球団の合併だってやってしまう。これらは全部ひとつの親会社がチームを丸抱えすることの弊害なのではないか。

もちろん、球団が上場すればこうした問題がすべてきれいに解決する訳ではない。しかし、球団が上場し、その株式が市場を通してファンに広く薄く保有されるとしたらどうか。そうなれば球団のオーナーはファン自身だ。ファンが株主総会で経営者を選び、その経営者がチームを編成する。経営者が魅力あるチームを編成できなければ自分たちで更迭すればいい。ワンマン・オーナーのわがままやお家騒動に情けない思いをすることもない。ドラフトもトレードも、やろうと思えば重要事項はすべて株主自身が決められる。大量のファンが一時に株式を手放さない限り、球団が身売りする心配もない。

先生は「ファンが株を買って一体感を持つというのも疑問だ。株は上がりも下がりもする。株のプロが『一緒にやりましょう』と誘うことは理解できない」とおっしゃるが、先生自ら「タイガースを『無償の愛』で支えている」と認めておられるその阪神ファンが、値上がりを期待してタイガース株を買うだろうか。僕はそうは思わない。阪神ファンはタイガースを支援するためにこそタイガース株を買うだろう。彼らは株価が上がったからといって所有株を簡単に手放すようなことはしないはずだ。企業にとってこれほど頼りになる安定株主は他にない。

阪神ファンなら、仮に球団が儲かってもそこから性急に配当を求めることもないだろう。むしろその資金を有望な新人やFAの有力選手を獲得するために使うべきだと考えるはずだ。それこそが「無償の愛」だろう。それでこそ市民球団だ。Jリーグですらまだ達成していない、市民スポーツの真の姿ではないか。大企業が球団を丸抱えにするスタイルに固執する考えが僕には分からない。むしろ阪神電鉄にタイガースの株式を放出させ、それをファンが購入してみんなでタイガースを支えようというのが「心の誇り」なんじゃないのか。どうでしょう、国定先生。



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