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去年の今頃にも「糞レフリー」というタイトルで同じことを書いたのだが、懲りずにまた同じことを書く。

昨日のFC東京×東京Vの試合で、ペナルティ・エリアの中か外かという際どいファウルがあった。判定はエリア外でFCはFKしかもらえなかったのだが、もしエリア内ならPKになって試合の成り行きは大きく変わっていたところだった。

このシーンが夜のNHK-BS「速報Jリーグ」で放送されたらしい。事情通によれば「NHKが放送したということは判定に問題がなかったということ」。つまり、誤審が強く疑われる判定だったら、ダイジェストはファウルのシーンを放映せず、FKのシーンからの放送になるというのだ。真偽はともかく、ありそうな話である。

確かに試合の中では審判の判定は絶対だ。しかしそれは審判の判断が常に無謬であることを意味しない。むしろ微妙な判定はいろいろな角度から検証され、批評の対象にされてこそ審判のレベルも上がるはずではないのか。批判の出そうな判定だから審判の権威を守るために放送しないというのではいつまでたっても審判の技量は向上しないし、ファンのフラストレーションもたまる一方である。

またドイツの話で申し訳ないが、今年のDFBポカール決勝、シャルケ×バイエルンでは審判の誤審が大きな話題になった。審判はシャルケのDFがペナルティ・エリア内で犯したハンドを見過ごし、バイエルンのゴールをオフサイドだとして認めず、一方ではシャルケのFWのダイブにPKを与えた。後半にはその埋め合わせをするかのようにバイエルンのオフサイドを見過ごしてゴールを認定した。

試合後、シャルケとバイエルンの双方から判定に対する激しい不満が出た。翌日の新聞にも大きな記事が出たし、専門紙「kicker」は審判の判定に5.5という最低の評価をつけた。もちろん試合の中継の中でも問題のシーンは繰り返しリプレイされた。見てはいないけどニュースやら夜のスポーツ番組でもきっと数限りない検証が行われたことだろう。

何でもかんでもドイツを見習えとはもちろんいわないが、試合中のオフサイドやファウルの判定すらきちんと検証しないJリーグの中継を見慣れた目には、このオープンな議論はうらやましい。審判には気の毒だが、しかしこうしてひとつひとつの判定が厳しく検証され、批判されることでこそ審判の質も向上し、結果として判定への信頼が増すはずである。審判は正当な敬意を受けなければならないが、そのためには敬意を払うに値する審判であることが大前提だ。審判も人間だから誤審を絶無にはできないだろうが、少なくとも誤審を包み隠してそんなものは存在しないような顔をしている限りは正当な敬意など払いようもない。

ドイツでは審判がカネをもらって試合を操作した疑惑が持ち上がり、現役の審判が逮捕される騒ぎにまで発展した。サッカーくじを別にしても、選手や監督をはじめ、たくさんの人がサッカーをネタにメシを食っている以上、ひとつひとつの試合には多くの人の生活がかかっているのである。その試合を統率する審判の権威は重要だし、それが分かっているからこそ審判の技量や判定が厳しく問題にされなければならないのだ。一方で技量の高い審判にはそれに見合った報酬と名誉が約束されなければならないだろう。

いずれにしても、誤審の可能性の高いシーンをわざわざ放送からオミットしているような国は、まだまだサッカー後進国といわれても仕方ない。「速報Jリーグ」で石山愛子が「このPKが試合を決めましたが、これはFWのダイブだったんではないでしょうか」と笑顔でコメントし、それにJFAの審判部長が「いや、このスロー映像を見てください」と答える、なんて時代が早く来ないかなと思う。



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