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日本放送協会のエビサワ会長がついに辞任を余儀なくされ、その後顧問に就任しようとしたもののそれも世論の強烈な反発があって辞退することになったらしい。もともと今回のNHKスキャンダルでは受信料の不払いがNHKの予算に影響を与えるほど視聴者の拒否反応がすごかった訳だから、辞任した会長がそのまま顧問に就任するなんてことでは、そうした皆さんのご納得を得られないのも仕方のないことかもしれない。

よし、じゃあ、僕たちがNHKからいったい何をされたかここで検証してみよう。そう、NHKがどんなひどいことをしたのかもう一度振り返ってみようという訳だ。ええと、確か、NHKのチーフプロデューサーが5千万円近い制作費を私的に流用したんだった。それから。それから?

もちろん彼が流用した制作費は元を正せば我々が支払っている受信料なんだから、視聴者には怒る権利がある。それはその通りだ。会長が辞めるのもやむを得ないかもしれない。しかし視聴者があんなにヒステリックに反応したのは本当にそれだけの理由だっただろうか。ていうか今じゃNHK問題といえば朝日新聞との程度の低いケンカのことだろ? プロデューサーの制作費流用なんてみんなもう忘れてるんじゃないの?

だとすればそこにあるのはもはや自動化した怒り、ってことになる。あるいはエビサワの悪人ヅラってことか。とにかく、僕たちが日本放送協会に対して怒る根拠なんてのは、所詮ワイドショーや週刊誌程度の確かさしかない情報に過ぎないんじゃないのかな。もちろん僕はNHKに何の問題もないとは思わない。エビサワが実は素晴らしい経営者だと言っている訳でもない。むしろ、国民から半ば強制徴収した受信料を元に関係会社をボコボコ作って情報コングロマリット化しつつある「国営放送」に問題がないという方がおかしいだろう。ただ、僕にはそこにおける問題の所在を正しく判断する材料なんか何もないし、エビサワを追い落とせば何かが解決するとも思えないというだけのことだ。

僕が怖いのは、確かな根拠もないまま、エビサワはけしからんという「雰囲気」に乗って、よってたかってひとつの組織やひとりの人間をボコボコにしてしまう「世論」とかいうものの軽薄さだ。ありきたりな例えで申し訳ないけど、それはありとあらゆるものを食い尽くしながら移動するイナゴの大群を思わせる。彼らが通り過ぎた後には草一本残らない。そして彼らには名前がなく、顔もなく、そして自分が食い尽くしたもののことなど覚えてもいないのだ。

そういえば日本道路公団の総裁をやはりみんなでよってたかって引きずり下ろしたことがあった。あのときの総裁の名前をあなたは覚えてるだろうか。僕は覚えてなかった(答えは「藤井総裁」)。ほら、あなたも僕も「空気」や「雰囲気」に反応して移動してはそこらじゅうを食い荒らす、忘れっぽいイナゴの一人なのだ、間違いなく。



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