logo 今やるべきこと(2)


行かない方がいいところのリストに「イスラム、アラブ関係の施設」というのも追加した方がいいような感じになってきた。もっとも、仮に今回のテロがイスラム原理主義者によるものだったとしても、それをもってイスラムやアラブそのものを敵視することは正しくない。アメリカではアラブ人が集団で暴行を受ける事件が発生したりしているらしいがそれは無意味で愚かなことだ。

だが、僕が今日言いたいのはそのことではない。今やるべきこと、それは大きな声で笑ったり歌を歌ったりすること、それが僕の今日の主張だ。

もちろん、たくさんの人がテロで死に、まだ行方の分からない人、生き埋めになっている人、遺体が収容されていない人もいる情況で笑ったり歌ったりすることは不謹慎だという人もいるだろう。常識的な考えだと思う。頭を垂れているのが本当は正しい態度なのかもしれない。だけど僕はそれでも、いや、それだからこそ笑おう、歌おうと言いたい。なぜならテロリストの狙いは僕たちを震え上がらせること、つまり僕たちから笑いや歌を奪うことだからだ。

ディズニーランドは閉鎖され、メジャーリーグの試合は中止された。ヨーロッパでもチャンピオンズ・リーグの試合が延期された。日本ではテロを連想させる映画やCMの放映が中止されているらしい。もちろん大規模なテロの直後にそういう配慮が行われるべきこと自体は僕も否定しない。だけどそういう空気が知らない間に僕たちの気持ちを沈ませ、物事をネガティブに考えさせ、ちょっとした冗談も言えないような重苦しい雰囲気、何か言えば「不謹慎な」と怒られてしまいそうなムードを作っていることは事実だし、それはとてもマズいことなんじゃないのかな。

そういう「世界中がお通夜」的な暗いムードこそテロリストがおそらくは最も欲していたものではないのか。飛行機がWTCに激突する映像が毎日テレビで繰り返し流され、人々の脳裏にそれが焼き付けられること、僕たちの心に深い傷を残すこと。僕たちが泣き、慌て、取り乱す様子を彼らはどこかでひそかに見守っているはずだ。僕たちが悲しみに沈み、言葉すら発することができずにいるのを彼らは嗤っているはずなのだ。

雰囲気に流された形だけの過剰な自粛ムードは何もいい方には導かない。彼らはそのことを知っている。だからこそ僕たちは今こそ僕たちの当たり前の生を生きなければならない。当たり前のように話し、笑い、歌わなければならない。そんな気分になれなくて笑いがぎこちなくても、それでも僕たちは当たり前のような顔をしてくだらない冗談を言い、肩をたたいて笑い合わなければならないのだ。僕たちは、今、泣きながらでも笑わなければならないのだ。それが今ここで生きている者のなすべきことなのだ。

笑おう、歌おう、大きな声で。楽しい話をしよう、外に出かけよう、美味しいものを食べよう、セックスもしよう。テロは割に合わない、テロなんかで僕たちの生活を壊すことはできないのだということをヤツらに思い知らせるために。それが僕たちの報復だ。



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