logo 誰がそごうをつぶしたか


そごうが倒産した。もちろん「倒産」にはいろいろあって、まったくの破産から今回のような民事再生法や会社更生法の適用申請、場合によっては単なる手形の不渡りまでの幅広い事態を総称して一般に倒産と呼んでいる。だから倒産した後、その会社や従業員、取引先や顧客がどうなってしまうかは場合によって異なる訳だが、今回のそごうの場合は民事再生法の適用申請だから一応会社を再建することが前提になっているようだ。

だが、そのためにはまず多過ぎる借金を減らさなければならない。裁判所の関与の下で合理的な再建計画を作り、それに則ってすべての債権者が原則として等しい割合で貸したカネをあきらめなければならない。かつて日本長期信用銀行がそごう関連に貸した2000億円近い債権は、いったん新生銀行に引き継がれたものの、今回の債権放棄騒動で国に買い戻されたから、国も一債権者として他の債権者と同じ割合でその一部を免除しなければならないことになる。そしてそれは結局のところ税金で穴埋めされることになるのだ。

この穴埋めの金額は、債権放棄をしたときより2〜300億円多くなると言われている。債権放棄に対しては与党を含めあらゆる方面から激しい攻撃が浴びせられたが、債権放棄というやり方を選ばずそごうを倒産させたことで国民は余分な負担を強いられることになった。国民の血税で私企業を救済するのはけしからんとだれもが口々に主張したが、救済するより倒産させた方が負担は大きかった訳で、もちろんそれは事前に予想されたことだったのだから(だからこそ国は「国民負担最小化ために苦渋の選択として債権放棄を受け入れた」と説明していたのだ)、そんなふうに主張した人たちは余分な出費はおそらく初めから覚悟していたのだろうが。

倒産させたことのデメリットは他にもある。債権放棄なら銀行だけが貸したカネをあきらめればすむが、法的手続きになれば一般債権者も同じ割合で債権をカットされる。たとえばそごうに商品を納入したがまだ支払いを受けていなかった業者も、什器備品をリースしたが今月のリース料をまだ受け取っていないリース会社も、場合によっては友の会の積立や商品券だってどうなるか分からないのだ。連鎖倒産や取引企業への影響が懸念されるというのはそういうこと。

確かに、国が一私企業に対する債権を自由意思で放棄するのは異例のことだ。中小企業がバタバタ倒産しているのになぜそごうだけが救済されるのかという疑問も理解できないではない。国が銀行団と歩調を合わせて気前よく債権放棄の大安売りに出たら経営危機にある大企業の経営者のモラルはどうなるのかというのも理解できる。正論だと思う。

だけどその正論を通すためには国民経済に極めて影響の大きな大型倒産をやむなしとするだけの「覚悟」が必要だ。大企業が倒産すればそのあおりで関連企業、取引企業はもっとバタバタ倒産するだろう。従業員は路頭に迷い、景気は再び冷え込むだろう。その対策と後始末にはまたしても膨大な額の税金がつぎこまれるだろう。正論を通せという論者は果たして本当にそこまで覚悟した上で法的手続きをよしとしているのか。

債権放棄が最善の策でないことはだれでも分かる。モラル・ハザードの問題があることも理解できる。債権放棄とセットになった自主的な再建計画で本当にそごうが再生できるのかが極めて怪しいことも確かだ。しかし、過ちはもうずっと前に起こってしまっているのだ。今、それをどのように解決しようとしても何かが損なわれることはどのみち避けられない。ハッピーエンドはもはやどこにもないのだ。だから債権放棄がダメだというなら、それに代わる対案が示されなければならないし、それによって損なわれるものが債権放棄によって損なわれるものより(価値的なものも含めて)小さいことを説明しなければならない。債権放棄はけしからんというだけでは寝言にも等しい。

この倒産がどう転がって行くかまだ分からないけど、ひとつ言えるのはこれで新生銀行の絡んだ大型不良債権の処理が極めて難しくなってしまったということ。新生銀行は債権放棄には応じずに、債権の買い戻しを国に請求するだろう、国も債権放棄への批判が厳しいことを身にしみて知っているから容易には放棄に応じないだろう。だとすれば新生銀行に多額の借金を負っている企業はもはや倒産するしかないのか。要は長銀メインだった会社はバカを見るということね。そういうケースがこれで終わりだとはとても思えないんだけど、僕には。

僕自身は法的処理は結果としては正しいと思うけど、そのためには上で述べたような社会的コストがかかる。コストをかけても筋を通すという社会的なコンセンサスが必要だ。そういう厳しい環境の中で生き残る能力こそが問われる時代になってるってことでしょ。そろそろ覚悟を固めなさいということなんじゃないのかな、結局。


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