logo ヴァーミリオン・サンズ


  Vermilion Sands (1971)
  邦訳: ヴァーミリオン・サンズ 早川書房(1980)


The Cloud-Sculptors Of Coral D コーラルDの雲の彫刻師 (1967) 訳:浅倉久志

グライダーに乗り、沃化銀を使って雲を彫刻する男たち。彼らは強い上昇気流がある珊瑚塔コーラルDを根拠地に様々な意匠を雲に刻み込んで披露しているが、ある時、大資本家の娘であるレオノーラの求めに応じて彼女の肖像を彫刻しようと嵐に向かって行く。飛翔への半ばオブセッションにも似た拘り、有名人の歪んだ肖像、そして彼女に決定的に惹かれて行く片輪の男。ここには中期バラードの主要アイテムがカタログのように満載だ。

Prima Belladonna プリマ・ベラドンナ (1956) 訳:浅倉久志

短編集「時間都市」に宇野利泰訳で収録。

The Screen Game スクリーン・ゲーム (1963) 訳:浅倉久志

短編集「溺れた巨人」に収録。

The Singing Statues 歌う彫刻 (1962) 訳:村上博基

周囲の人間の感情に反応して音声を発する「音響彫刻」のギャラリーに、ある時大富豪のルノーラ・ゴードンが姿を現す。たまたまそこに居合わせた彫刻家の主人公は、とっさに録音テープの音声を彫刻の音響だと偽り、彼女にその彫刻を高額で売りつけてしまう。過去を秘めた美貌の女性と彼女に翻弄される男たち。そしてそのトラウマ故に導かれるカタストロフ。「ヴァーミリオン・サンズ」シリーズの基本構造はここでも繰り返される。

Cry Hope, Cry Fury! 希望の海、復讐の帆 (1967) 訳:浅倉久志

砂漠を走るヨットで砂エイ狩りに出かけた主人公ロバートは遭難し、謎の美女ホープ・キューナードに救助され、傷を癒すため彼女の屋敷に居留することになる。彼女は自動的に対象のイメージを描き出すキャンパスに彼の肖像を焼きつけたいと申し出る。だが、キャンパスが描き出した彼らの肖像は次第におぞましい姿に変貌して行く。人の実像を描き出すキャンパスというアイデアが秀逸。そしてまた物語は陰惨で甘美な結末に向かうのだ。

Venus Smiles ヴィーナスはほほえむ (1967) 訳:浅倉久志

1957年に発表され短編集「時間都市」に収録された「Mobile」を改作したもの。基本的な物語は不変だが、ここでは舞台がヴァーミリオン・サンズに移り、成長する金属彫刻の作者はやはりロレイン・ドレクセルという女性彫刻家に変えられている。そして彼女が作り出した彫刻は成長するだけではなく大音響で音楽を奏でる音響彫刻なのだ。硬質な鉱物と柔らかな有機物の婚姻はまさに「クラッシュ」や「結晶世界」でバラードが夢見たもの。

Say Goodbye To The Wind 風にさよならをいおう (1970) 訳:浅倉久志

人間の感情に反応して変化する活性織物で作られた衣服たち。主人公サムスンが経営するブティックに、美容整形で15歳の美少女の外見を維持し続けるモデル、レイン・チャニングが訪れる。彼女は高価な活性衣服を買い求めるが、その生活は謎に包まれていた。サムスンがかつて彼女の愛人のものだった活性衣服に絞め殺されそうになるシーンは映像的な喚起力すら感じさせる。物語の構造は他のシリーズ作と同じバラードの原風景だろう。

Studio 5, The Stars スターズのスタジオ5号 (1961) 訳:浅倉久志

短編集「時間都市」に『アトリエ五号、星地区』(訳:宇野利泰)として収録。

The Thousand Dreams Of Stellavista ステラヴィスタの千の夢 (1962) 訳:永井淳

短編集「永遠へのパスポート」に収録。



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