
★★★★★ |
さて、何から書き始めようか。ペイル・ファウンテンズの音楽を聴くとき、僕の心をいつもよぎるのは果てしない後悔である。何か大事なことをやるべき時にやらないまま大人になってしまった僕の青春時代への悔恨であり、何よりこのペイル・ファウンテンズを10代の時にきちんと聴いておかなかった僕の愚かさへの腹立たしさである。このアルバムが発売された84年、僕は大学1年生だった。あの年にこのアルバムを聴いていたら僕の人生は少しばかり変わっていたかもしれない。そう、ほんの少しばかり、でも決定的に。
僕が実際にこのアルバムを手にしたのはそれからたぶん5年か6年後、就職してそれまでのように毎日ロックばかり聴いている訳にも行かなくなったしんどい時期だった。ネオアコの名盤だといわれて確か神戸の中古盤屋で買ったと思う。そしてこのアルバムを熱心に聴いたことはおそらくほとんどなかった。それなのにこのアルバムは少しずつ時間をかけて僕の中にとても特別な位置を占めるようになった。大学生の頃に繰り返し聴いた何枚かのレコードよりもずっと、このアルバムは僕の心に深く何かを残して行ったのだ。
バカラック・マナーの美しく特徴あるメロディ、トランペットやストリングスをフィーチャーした流麗なアレンジ、そしてそこに絡むギターの激しいカッティング。ここでは静謐な美しさとある特定の時期にしか持ち得ない特権的な激しい苛立ちや性急さが奇跡のようなバランスで溶け合っている。そしてそれらをひとつにまとめ上げてペイル・ファウンテンズの刻印を捺しているのはマイケル・ヘッドのしゃくり上げるような声だ。僕はこのアルバムを18歳の時に聴きたかった。それはおそらく僕の人生最大の後悔なのだ。
|
|